強引社長の不器用な溺愛
なんだ、この感覚。苛々ではない。
モヤモヤでもない。

ああそうか。
妹分が男にモテて、兄としてちょっと心配してんだな。

女兄弟がいないから、そういうことを考えるのが初めてで驚く。


「お待たせしました」


篠井がタクシーの後部座席に入ってくる。


「社長?どうかしました?」


「なにが?」


俺が聞き返すと、篠井が不思議そうな顔をしている。


「すごく怖い顔してましたよ」


怖い顔……まさか。そんなに子どもじゃないだろ、俺は。
篠井の指摘に我知らず動揺する自分を知った。


「寒かったんだよ」


ごまかす声が不自然じゃないといい。



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