強引社長の不器用な溺愛
「社長、美味しいですよ。早く食べたらどうです?」


無邪気に言う篠井。
ほろ酔いなのか大きな目がとろんとしている。

くだけたムードに勘違いしちゃいけない。
そう思いつつ、気持ちの一部が加速していく。

篠井は清塚さんと進展するだろうか。
キスするだろうか。
結婚を前提に考えるだろうか。

それとも俺が今誘ったら、応えるだろうか。
今なら、篠井は俺が奪い去れる。
人のものになる前に……堂上にはそう言われた。

俺は篠井とどうなりたい?
どうもこうもない。今まで通りのパートナー関係がベスト。

……本当に?
誓ってそう言い切れるか?
篠井絹が今日みたいに他の男と笑い合っていて、応援するなんて考えながら、面白くない顔をしていたのはどこの誰だよ。

……やめろ。
篠井にとっては全部遊びの範囲だ。


「社長?本当に眠いんですか?ベッド行きますか?」


だけど、だけど……。

俺は今、篠井に触れたい。


「ああ」


俺は答えて、向かいの椅子に座る篠井の手をつかんだ。
篠井はちょうど紙皿とプラスチックのフォークを丸テーブルに置いたばかりで、俺の顔をぽけっと見ている。


「ああ、ベッドに行く」


俺は篠井を引き寄せ、そのまま抱き上げた。
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