強引社長の不器用な溺愛
社長が、私を欲しそうに見ている。
この前やめてしまった続きを望んでいる。

厚めの唇が、私の肌をたどる想像が瞬時に頭を駆け巡った。
ドラマの中で起こるようなロマンティックな夜が現実になるなんて。
しかも、その相手が社長だなんて。

はからずも嬉しいと思ってしまう私がいる。

社長とこんな状況になっていることが、まったく日常とかけ離れていた。だからこそ、すんなりと喜んでしまったのかもしれない。

パーティーで私に連絡先を渡してきたイケメン清塚さんが浮かぶ。
正直、モテたことがないから、すごく嬉しかったけど、社長に押し倒されて身体を望まれている方が何百倍もドキドキした。

ずっと家族のように見てきた社長が、ひとりの男の表情をして、私を見下ろしているのだ。

社長のものになる?
社長にバージンをあげる?

少し怖いけどそれもいいかもしれない。
この人の見たことのない顔が見られるなら、
今夜、見てみたい。

私の脳は高揚と興奮に任せ、瞬時に様々な想像をめぐらせ、自分の心を納得させた。

しかし、同時に私は別な計算まで、答えをはじき出してしまった。


今の状況 × 八束東弥と寝てもイイですか? = 駄目。絶対に駄目。


……社長は社長だ。

上司で、兄みたいなもので、面倒だけど大切な人だ。
今、雰囲気だけでセックスしてしまったらいけない人だ。

だって、社長は……私を好きだから抱きたいんじゃない。

私が“気軽に遊べる女”だと思ったから抱こうとしてる。
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