強引社長の不器用な溺愛
絶望的な答えだった。
自分で作り上げた檻に閉じ込められた気分だった。
世慣れた女、そんなキャラ設定にしなければ、社長は私に触れようなんて思わなかっただろう。

今、このまま社長に抱かれたら、私は一生後悔する。
恋愛とは別次元で大事な人の遊び相手になんかなっちゃいけない。

結果、私は正常な思考に立ち戻った。

社長を大人ぶって、拒絶したのはそういう事情だ。

そして、自分の浅はかさを罵りながら、あの晩の一瞬の至福を何度も思い浮かべて赤くなってるってわけ。
ここ数日間!

もう、自分が嫌すぎる。
死ぬる。もう死ぬる。
自己嫌悪って死因にならないかな。

私はオフィスの入るビルの前に立ち、深呼吸。
落ち着け、落ち着け。
赤い顔してオフィスに戻ることはできない。

帰って、掃除の出来を確認して、場を締めて、お疲れ様の乾杯の準備をして……。
そうだ、お正月飾りを飾ってないぞ。フロアのドアにくっつけなきゃ。


「篠井―、どうしたー?」


のんきな声が聞こえ、振り向くと、そこには堂上さんと社長の姿。

私は慌てた。
今さっきまで、たぶん赤い顔をしていたはずだ。見られていないだろうか。


「買い物か?えらいぞ、働き者の篠井くん!」


社長も平気な顔で私を覗き込んでくる。
両手の荷物を受け取る気はないようだ。
まあ、大きなものはないけれど。
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