強引社長の不器用な溺愛
「おふたりをはじめとした男性陣による厄介ごとが間もなく終息予定です。コノヤロウって気分を飲み込んで今年を終えようと思っておりますので、最後くらい協力しやがれです」


私が答えると、ふたりはけらけら楽しそうに笑って、私の荷物を持ってくれた。
ケーキの箱だけは自分で持ち、エレベーターに乗り込む。

はあ、私、普通にできたかな。

社長が今までと変わらぬ態度を示してくれてるんだから、私だってそうしなきゃ。

オフィスに戻ると掃除はもう後片付けの段になっていた。
そちらはみんなに任せ、私はドアの外側にお正月飾りをつけることにする。
簡易フックを取り付けていると、社長がにゅっと顔をだした。


「篠井、正月は実家に帰るのか?」


「邪魔ですよ、社長。……ええ、30日に帰って新年2日に戻ってくる予定です」


「長野だっけか」


「そうです」


なんだろ、この不毛な会話。世間話とも違うみたいだし。

すると、社長がするりと廊下に出てくる。
私を見下ろして、普段とまったく変わらぬトーンで言う。


「新年の3日、ちょっと付き合ってくれ。正月早々、ひとつ仕事があるんだよ」
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