強引社長の不器用な溺愛
って言っても、篠井が堂上にどこまで本当の話をしたかはわからない。

もしかして、篠井の機嫌の良さは、清塚さんとの仲が順調に進展しているからかもしれないじゃないか。

ここで俺が変なちょっかいを出したら、クリスマスイブの二の舞だ。
現状維持、現状維持。


「社長、ちょっといいですか?」


俺のデスクの横にやってきたのは沙都子さんだ。


「社長のメールにパエーゼ・デル・バンビーノから何か来てませんか?」


「あー、あのネット通販サイトの?」


俺はようやくスリープ状態のパソコンを復帰させる。

パエーゼ・デル・バンビーノは、子供服のネット通販サイトで、若いママが三人で運営している。
通常、うちはウェブ広告のデザインなら請け負うが、通販サイトの設定や構築なんかはやっていない。畑違いだ。

しかし、沙都子さんの経歴は元SE。世話になった知り合いづてに、安くサイトシステムを作りたいと依頼があり、沙都子さんができるというので請けた仕事だ。

運用してからの、システム管理は沙都子さんと俺で、クライアントのママさんに伝授しに行ったっけ。


「えーと、『誤発注が発生しています。原因不明です。クレームと返品がすごくて大変です。至急、ご連絡ください』。うお、緊急事態」


メールの日付は今日の朝7時だ。


「本来なら私にもメールが来るんですが、あちらもパニックみたいで社長にしか送ってないみたいです。今さっき、私がサイトをチェックしに行って気付きました」


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