強引社長の不器用な溺愛
私は唇を開く。

なに、言いなりになってんの、私。
そんなことを頭の隅で思ったけれど、気持ちを奮い立たせる。

八束東弥(やつかはるや)は私のサインを過たず受け取り、顔の角度を変えると、厚みがあるけれど形のいい唇を重ねてきた。
お互いが深く深く絡み合うように。

差し入れられてきた舌は熱く、違和感は一瞬だった。
私をとろかすために巧妙に動き回るそれを必死に受け止める。

頬にあった手は後頭部に移動し、私の髪の間に強く五指が食い込む。
反対の左手は、私の背に回されていた。

自分の手の置き場がわからない。いや、戸惑っていたら格好悪い。
私は彼の左肘に馴れた様子で右手を置いた。
ついぎゅっとシャツを握りしめてしまうけれど。

左手は同じく彼の背に回す。
身体の密着が高まると、キスの密度も増した。

歯列の裏を刺激されびくんと身体が震えた。
彼の束縛的なキスが激しくなる。

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