強引社長の不器用な溺愛
『付け入る隙もなさそうだなぁ』


深いため息の後、清塚さんが続けて言った。


『もう連絡はしません。色々とすみませんでした』


「とんでもないです。清塚さんみたいに素敵な人に、一瞬でも好きになってもらえて本当に嬉しかったです。ごめんなさい」


『……ありがとう、篠井さん。さようなら』


通話が切れた。

ひどいことをした。気を持たせて拒絶した。

でも、今、言わなかったら、きっともっと傷つけた。

いつか、思うかも。
『清塚さんみたいないい男を振っちゃって、私のバカヤロー!!』って。

でも、人生で後出しジャンケンが効くことなんて、ほとんどないんだ。
前を向いたら選んだ道を走るしかない。

考えよう。
自分の気持ちを。
社長との長い関係に、変化をもたらしてもいいのか。
一時の気の迷いじゃないか。

私はまだ手にあるスマホで堂上さんにメッセージを送った。


『社長の実家のご住所、ご存知ですか?』




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