強引社長の不器用な溺愛
「全部、話したんですか?」


「おう、嘘は謝った。その上で、“着物のさこた”は兄貴が継ぐってことで、親父と俺の総意を母親に伝えた。」


「お母様は……」


「しばらく親父に『離婚だ!』って怒鳴って、俺に『勘当する!』って喚き散らして、今、部屋に閉じこもってる」


ちょ……ちょっと、エライ修羅場になっちゃったじゃないですか。
どうせ、あなたのことだから、何のオブラートにも包まず言ったんでしょう?

家族だろうが、それじゃ、駄目な時もあるんですって!
だから、私も一緒に行こうと思ったのに!


「もうじき、私の恋人が様子を見に来てくれるそうです」


幸弥さんが穏やかに言った。


「義母は、私はともかく、私の恋人の真冬は悪しからず思っていますから。きっと、落ち着かせられると思います」


そうなんだ。幸弥さんとしたら複雑だろうけど、お母様の心に頼れる同性の存在は必要かもしれない。


「おまえのこともきちんと話してきたぞ!」


社長ひとりがあっけらかんとしている。私は何を言われたかと、険しい顔で社長を見つめ返す。


「なんて?」


「俺が狙ってる女。今回は嘘だったけど、そのうち本当に婚約者にするからって」


「う・嘘……」


そんなこっぱずかしい説明をしてきたのか、この人は!!

なんか、これで断ったら、私すんごい悪印象じゃない?八束家にとって!
< 210 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop