強引社長の不器用な溺愛
「絹さん」


幸弥さんが口を開いた。


「東弥にも言ったんですが、4月に私と恋人の結納をやろうと思っています」


「え!?本当ですか?おめでとうございます!」


ずっと、社長に遠慮して彼女を待たせてきたという幸弥さん。
今回のことが、幸弥さんたちのご結婚の助けになったなら、まだ救いがある。


「家族だけで食事会も行う予定です。もし、よろしければ絹さんにもご参加いただきたいんです」


「私……も、ですか?」


社長が困惑する私を遮って言う。


「おまえ、頭いいんだから気づけよ。兄貴が言いたいのは、4月のそのめでたい日までに俺のものになるか結論を出せってことだよ」


「え・えええ!?ああ、そういう……」


答えながら私の語尾は尻すぼまりになって行き、気付けば私の両頬は燃えるように熱くなっていた。
手袋の両手で頬を押さえていると、幸弥さんが覗き込んでくる。


「絹さん、勝手を言いましてすみません。私はやはり兄バカなんです」


「いえ、その……誠意を持って考えさせていただきたいと思います」


私はたぶん真っ赤になった頬のまま、コクコクと頷いた。



< 211 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop