強引社長の不器用な溺愛







拍子抜けしたお宅訪問(未遂)の帰り道、私と社長はふたり並んで梅が丘の駅まで歩いた。


「幸弥さん、おめでたいですね」


「おう、俺たちも続いておくか」


「社長……どこまで本気なんですか」


「どこまでも本気」


ちらんと横を見上げると、いつも通りの社長の横顔。
まだ反対側の頬は腫れが残っているけれど、湿布はもうしていない。

ずっと、一緒にいた相棒。彼にこんなことを言われる日が来るなんて。
そして、私自身、こんな優しい気持ちで彼を見上げられるようになるなんて。

4月まで、待たせる必要なんてないかもしれない。

だって、今ここにいる八束東弥を、誰よりも大事に想っている私がいる。

家族のこと、会社のこと、みんなのこと……すべてに真剣に取り組むこの人。
めちゃくちゃもやるし、すぐに勢いで仕事をとってくるし、面倒ばっかりだけど、ものすごく魅力的なこの人。

彼の右手を取って、手を繋いだら、私の気持ちは伝わるだろうか。

あなたのことを、今、一番考えてるって伝わるだろうか。

好きになってしまったって、言えるだろうか。

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