強引社長の不器用な溺愛
『俺は大丈夫だ。すぐに退院してやるから、その間はおまえがこのプロジェクトの舵取りをしてくれ。後生だ!おまえは俺の大事な息子だと思ってる』


社長の言葉に清塚さんがとうとう泣き崩れた。
大沢社長の言葉ほど、清塚さんの心を動かすものはないだろう。


「社長、……社長、申し訳ありませんでした。僕は本当に馬鹿です。……もう二度と間違えません」


『おう、おまえを信用する。退院したら、出張経費付きで可愛い女の子がたっくさんいる店に連れてってやるからな!失恋なんか即忘れられるぞ!』


うーん、それは羨ましいかも。
と、心の中で思ったことは篠井にバレていたみたいだ。

篠井が俺のことを呆れた目で見ていたから。

通話を終えると、清塚さんは篠井にスマホを返した。
号泣したばかりのその顔は奇妙に艶っぽくて、男の俺から見ても綺麗だ。イケメンっていうのはどれだけ得なんだ。


「篠井さん、本当にすみませんでした。僕は、この一ヶ月あなたに本気で恋をしていました。……あなたにひどく失礼な態度をとってしまいました。許してください」


だーかーら、篠井と見つめ合うなってば!
俺一人焦る中、篠井が美しく微笑んだ。


「いいんです。でも、私も心を決めました」


清塚さんが悲しげにふっと微笑み、それから俺の方を見た。


「申し訳ありませんでした。……どうか、お幸せに」





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