強引社長の不器用な溺愛
社長がパンを咀嚼し飲み込んでから封筒を差し出してくる。


「これ、うちの大ばあちゃんからの手紙」


大お祖母様から?
たった一度新年会で会った大お祖母様は、私と社長が嘘の婚約だとあっさり見破っていた。

正式に付き合うことになったっていうのは、早速、翌日曜に八束家へ報告に行ったけれど。
大お祖母様の耳に入っているのかは不明だ。

なんだろう、私に手紙って。なんか、怖い。

食事の手なんか当然止まってしまい、ガサガサと封筒を開ける。

中には一筆書きの細長い便箋が二枚。
一枚に流麗な書体でこう書かれてあった。


『絹さんへ

玄孫を楽しみにしています。

硲田フキ』


手紙を見て、唖然とする私。
話、伝わるの早い。というか、玄孫って……やっぱりソコ?

もちろん、内容は社長にも見えている。ニヤニヤと私を見つめているではないか。


「大お祖母様っておいくつ?」


「ああ見えて101歳。サイボーグ並のスペックがあるけど、高齢だからな。一刻も早く玄孫を見せてやらなきゃいけない」


「101歳……」


あれだけしっかりされてたら、あと10年はお元気だと思うけど、社長が言いたいことってそれじゃないんだよね。
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