強引社長の不器用な溺愛
「来週末、私の実家に来てくださるんですよね」


父には『付き合うことになったら挨拶に来い』と言われているし、社長は律儀に守ろうとしてくれている。
そんな彼の真心を利用し、私は平然と提案する。


「父に挨拶してからじゃないと、やはりそういった関係はまずいんじゃないですか?ほら、普通の始まり方じゃないですしね。私と東弥さんの恋愛って」


逃げ口上どーん。
さあ、どう返す、八束東弥!?


「それだと、おまえの実家にお泊りする時が、俺たちの初夜になるぞ。いいのか?ご家族に聞こえるくらい鳴かせちゃうぞ、俺」


社長の言葉に、ワインが口から噴水になるところだった。
耐えたけども!

さらっとエロい返しをすんな!


「あのですね、私たち、上司と部下としての付き合いは長いんですし、もう少々我慢できませんか?別にこれからずっと一緒なんですし、焦ることないんじゃないかと」


言い訳に必死な私を見る社長の視線が変わった。

おや、なんだろう。あの余裕たっぷり且つ意地悪な笑顔は。
なんか、嫌な予感。


「絹、あのさ、これはちょっと前から確信を持ってるんだけど」


「はぁ……」


「おまえ、処女だよな」


今度こそ、ワインが飛び出そうになった。
おしぼりで口元を押さえ、私は小さく呻いた。

なんで?
なんで、気付いたの?

私、全力で大人の女感出してきたんですけど!!
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