強引社長の不器用な溺愛
私が言葉にならないほど慌てふためいているのを見て、社長はやっぱりといった顔をした。


「だいたい、アンバランスなんだよ。キスはするのに、身持ちは固いし。ベロチューかましてくるくせに、俺に責められるとすぐ可愛い声出すし。困った顔が隙だらけすぎるし」


「ちょ……東弥さん。ここお店の中なんで、声抑えて」


「最初は俺をからかうために、初心な女を演じてんのかと思ったけど、実際は逆なんだろ?超恋愛初心者が、無理して大人女子の仮面をかぶってたっつう」


あああ、もうそのへんで勘弁してください。
見抜かれてたと知った瞬間から、私の脳内はボコボコ沸騰し続けております。
恥ずかしくて、情けなくて、顔向けできないほど申し訳なくて。


「……ごめんなさい」


私は小さな声で謝った。背を丸め、両手を膝に置いて頭を下げる。
もう、素直に言うしか道がない。羞恥で死にそうであります。


「キスだけなら経験があったから、うまくできるかと思ったんです。でも、東弥さんと初めてしたキスに……」


「ハマった?」


聞き返され、余計脳内が沸いてくる。ああ、その通りなんだ!自分からねだれなくて、大人の女の遊びぶってたんだ!


「キスしたい=東弥さんが好き……ってことだったのかもしれないですけど、あの時期はとにかくパニックでした。もう一度キスしたいって思いつつ、理由が見つからなかったり。勢いでしてみたものの、それでも東弥さんの遊び相手になるのは悲しいとか。……とにかく、色々考えちゃって」


「いや、いいよ。そういう告白、嬉しい」
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