強引社長の不器用な溺愛
「東弥さん、私……」


何て言えばいいかわからず、もごもごと口ごもる。東弥さんは、苦笑いをもう少し寂しそうに歪めた。


「俺、実はクリスマスイブを引きずってんだよ」


イブ?えーと、あの出張の夜だよね。
大人女子モードの私が、東弥さんを完全拒否したあの晩。


「押し倒したらさ、絹は怯え切った顔で俺を見てるじゃん。俺は、おまえが乗ってくるんじゃーなんて期待してたんだよ。だから、俺の行動でおまえをビビらせたっていうのは、だいぶショックだった」


そんな繊細な思考、あなたにあったんですか!!
八束東弥の新たな一面を知り、逆に驚く私。
うーん、でもあの時の私は怯えてたんじゃないんだけど。ひとつの出来事でも、受け取り方って、かなり違うんだなぁ。


「あの晩の私は、東弥さんと遊びでやらしいことをしちゃまずいって思ったんです。怯えてたというより、軽い女を演じちゃった自分に盛大に後悔してました。あと……」


一瞬、言い淀んでから言葉にする。
だって、口にしないと。きっと伝わらない。


「ものすごくドキドキしてました。あんな風に強引に迫られるの、生まれて初めてだったので。東弥さんの男性としての顔を見て、もっと知りたいって……思いました」


東弥さんが顔を上げた。あ、なんか照れてる。頬っぺためちゃくちゃ赤いし。
割と、こういうところ硬派だよね、この人。

駄目押しの本音を付け加える。
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