強引社長の不器用な溺愛
「あと、おまえ、ちゃんとイッて……」


「セクハラ!知りません!」


恥ずかしい言葉をかき消すように、大声をかぶせる私。


「いーや!俺にはわかるぞ!」


「黙ってくださいー」


私は布団から飛び出して、東弥さんの両頬を、ぐにーっとつかむ。うん、予想通りの変な顔の出来上がり。

すると、東弥さんも腕を伸ばして私の頬をむにーっとつかむ。痛い痛い!
このやろー、やる気かー?
ばっちこいじゃー!

私たちは頬っぺたをつねり合うという小学生男子並みの喧嘩をようやく実現し、ベッドの上で転げながら戦った。

しばし、ドタバタやっていたけれど、冷えてお互いの温度が恋しくなったので、布団の中で抱き合う。
本当に子どもか動物かってところだね、私たち。


「あんな恥ずかしいことされて、もうお嫁に行けない」


「これ以上どこへ行く気だ。覚悟決めて、俺んとこ来い」


うん、そうします。
言葉にする代わりに、東弥さんの広い胸に顔をこすりつけた。

この人とあんなに、甘くて激しい夜を過ごすことになるとは。この人とこんなに、愛しい朝を迎えることになるとは。


「まだ夢みたい……とか思ってた?」


図星をつかれて、焦る。
もー、心の声を読まないでください。

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