強引社長の不器用な溺愛
篠井の悪態も態度もいつものことだ。
安い挑発に挑発仕返して、あっちが乗ってきたのが意外だった。

ふざけた気分で追い詰めて、緊張した顔のあいつにちょっとワクワクして、唇を重ねたら止まらなくなってしまった。

気付いたらデスクに押し倒して貪るようにキスしていた。
篠井は嫌がってなんかいない。
むしろ、もっともっととねだるように唇に噛み付いてくる。

このままふたりでいけるとこまでいってみようか。
俺たちの間にはあの瞬間、暗黙の了解があった。
たぶん、俺の思い過ごしではない。

手があいつの太ももに一瞬触れた。
それで、ようやく正気に戻った。

俺、何やってんだ。

部下で仕事上の相棒である篠井絹を、このまま抱く気か?

唇を離し、篠井を見下ろしてクラクラした。

篠井は俺を見ていた。
真っ赤な頬と濡れそぼり薄く開いた唇で。
潤んだ瞳は、戸惑っているようにも、欲しがっているようにも見えた。

正直、ものすごくエロかった。
ただちにキスを再開しようかと思ったくらい。

というか、完全にこっちの身体が反応してしまっていた。

まずい。
すごくまずい。

気まずいだけじゃない。俺のフィジカルがまずい。
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