強引社長の不器用な溺愛






その日は、昼を随分過ぎた時刻に手が空いた。

顔を上げると斜め向かいのデスクで、ちょうど堂上が伸びをしたところだった。
オフィスにいることが珍しい俺と目が合う。


「社長、昼メシまだですか?」


堂上裕(どうじょうゆたか)は大学の同級生で、親友と言っても差し支えない仲だ。
みんなの前では名称だけ『社長』と呼ぶ。
完全にポーズなので、態度は友人に対するぞんざいなものだけど。


「ラーメンにしようか」


まだとも、一緒に行くかとも言わない。
そう言えば伝わる。友人はいいもんだ。


「毎日じゃん。太るよ。いつまでもあると思うな金と基礎代謝」


「うっせー」


訂正、友人とは厳しいものである。

結局、堂上と近所のタイ料理店へ行く。
悔しいのでタイヌードルを頼む俺を尻目に、堂上はグリーンカレーのサラダセットという目に優しいメニューだ。

それは身体にも優しいのか?
太らないメニューなのか?
……油キトキトラーメン、小どんぶり付きよりはマシか。
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