強引社長の不器用な溺愛
「ごめんごめん。あのさ、篠井が八束の嫁さんになれば、全部解決じゃない?」


いきなり言われた。
今度こそ、口に何にも入ってなくてよかった。
こいつ、何を言い出した?


「待て、話が全くわからない」


俺が頭を抱えて問い返すと、ケロっとした表情で答える堂上。


「八束と篠井は、喧嘩しつつも仲良しのグッドパートナーだと思うんだよね」


「仕事上はな!」


「プライベートでもグッドパートナーになれない?そうすれば、総務兼秘書はどこにもいかない。八束デザインは超安泰。八束社長のライフも超安泰」


こいつ……なんつう短絡……。


「あのな、堂上はリカちゃんを愛してないのか?」


「だから気安くちゃん付けで呼ばないでよ。もちろん愛してますよ」


「じゃあわかるだろ。結婚ってのは愛あるふたりがするもんなんだよ」


「えー?でも八束は篠井のこと好きだろ?」


好き?
俺が篠井を?

いや、待て。変な意味に捉えるな。


「部下としてはな。俺は一度だってあいつを女として見たことは……」


言いかけてはたと止まる。

あるわ。
ついこの間、思いっきり女として見ちまった。
抜け目なく堂上が目を細める。


「あるんだ」


「ねえよ!」


全否定で嘘をついておく。
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