強引社長の不器用な溺愛







国立府中インターチェンジから中央道へ。
俺は助手席、運転席には篠井がいる。

俺がベルファイアを買った時は、車高が高い車は運転したことがないなど、文句ばっかり言っていた篠井だけど、この大きめの車を運転している彼女は俺よりさまになっているように見えた。

たまに運転手を買ってでてくれる篠井。
篠井が運転しているのを見るのは結構好きだ。

一応、パーティー用の仕立てスーツの俺と、フリルシャツにジャケット、ペンシルスカートの篠井。
デートには見えないな。


「あれ、この曲」


社内に流れる曲はラジオのセレクトだ。
俺が大学時代に流行っていた曲。

最近はこのバンドもあまり名前を聞かないし、活動しているのかもわからないけれど、曲だけは当時の空気を孕んで流布されていく。


「懐かしいですね」


俺とふたつしか年の変わらない篠井が言う。
ああ、篠井も大学時代に聞いてたんだな。
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