強引社長の不器用な溺愛
助手席から降りると、座席にスマホが落ちる。
足元に落下する前にと手を伸ばすと、同じ事を考えたであろう篠井と手がぶつかった。
俺の指先に当たる篠井の手の甲。
薄暗い社内に眩しいくらいに白く浮かび上がった篠井絹の手。
すぐさま、それは勢いよくひっこめられた。
うお、スゲー過剰反応!
って、俺もスピーディーに手ぇひっこめちゃったけど!
たかが手と手が触れ合っただけで、何を慌ててるんだ、俺たちは。
何を意識し合ってるんだ。
はっと顔を見ると、篠井は気まずいことこの上なしというように頬を赤くし、目をそらしていた。
触れてしまった右手を胸の前に左手で覆っている。
おいおいおい、何その態度。
えーと……。
えっと、すみませんでした。
「手の甲ひっかいちゃったな。すまん」
俺は適当に謝る。
言いたいことはそれじゃない。
でも、他に言うべき言葉が思いつかない。
篠井が口の中で小さく、イイエと答えた。
「ありがとな。それじゃ」
俺は助手席のドアを閉めると、目的地のエントランスに向かって歩き出す。
篠井はまだこちらを見ているだろうか。
どうかさっさと車を発進させてほしい。
足元に落下する前にと手を伸ばすと、同じ事を考えたであろう篠井と手がぶつかった。
俺の指先に当たる篠井の手の甲。
薄暗い社内に眩しいくらいに白く浮かび上がった篠井絹の手。
すぐさま、それは勢いよくひっこめられた。
うお、スゲー過剰反応!
って、俺もスピーディーに手ぇひっこめちゃったけど!
たかが手と手が触れ合っただけで、何を慌ててるんだ、俺たちは。
何を意識し合ってるんだ。
はっと顔を見ると、篠井は気まずいことこの上なしというように頬を赤くし、目をそらしていた。
触れてしまった右手を胸の前に左手で覆っている。
おいおいおい、何その態度。
えーと……。
えっと、すみませんでした。
「手の甲ひっかいちゃったな。すまん」
俺は適当に謝る。
言いたいことはそれじゃない。
でも、他に言うべき言葉が思いつかない。
篠井が口の中で小さく、イイエと答えた。
「ありがとな。それじゃ」
俺は助手席のドアを閉めると、目的地のエントランスに向かって歩き出す。
篠井はまだこちらを見ているだろうか。
どうかさっさと車を発進させてほしい。