強引社長の不器用な溺愛
なんで、あんなエロいキスしちゃったかなぁっ!!!
あの日の私、死ねぇぇぇぇ!

今週、私はその事実を封印して過ごした。

『あの金曜深夜の出来事は、全部私の夢でしたのよ』みたいなことを自分に言い聞かせ、フッツーに仕事をした。

社長を前にしても、『ああ、あんな夢を見てしまって気まずいけれど、しょせん私の夢なわけでこの男は何にも知らないのよねぇ』っていう自己暗示をかけまくり、どうにかいつもと変わらぬ態度で接することができた。

自分、エライ。
篠井流自己暗示道、初段認定。

社長の態度も変わりはしなかった。
キスしてわかったけど、あんなエロくて野獣なキスする男が素人童貞なわけはなく、しかもそこそこ経験も豊富で私みたいな処女を腰砕けにするなんて造作もないことで……つまりは私スッゲー空回り!

ただ、唯一の救いはキスに関しては私、頑張ったと思う。

処女なうえ、キスだってさほど経験値高いわけじゃないけど、『経験豊富な大人の女』を気取った身として、しょぼいキスはできなかった。
社長のキスに負けまいと、必死に唇を重ねた。

私が求めれば求めるほど、がむしゃらに返ってくる唇が心地よすぎて。
頭の中で、ぱちぱちと星がはじけた。
社長の息遣いが、私を真剣に欲しがっているって感じたら、もうどうにでもなってしまえと一瞬すべてを放棄しかけた。

あの瞬間、私と社長は完全に男と女だった。
お互いの肉への執着と言ったらいいのか。

もう離れたくない。離したくない。
もっと味わいたい。気持ちよくなりたい。
そんな感情がキスに溢れていた。
< 55 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop