強引社長の不器用な溺愛
ああ、しょぼくてつまんないキスだったら、こんな風に悩まなかった。
とろけてなくなりそうなキスだったから、こんなに心が痛い。

相手は社長なのに。
私はあのキスだけ切り取ったら、もう一度したいと思っている。

なにそれ、サイテー。
身体目当てっすか。自分。

でもさ、それが社長じゃない人だったらよかったよ。
身体だけの関係だなんて、割り切って、またキスしたっていい。
処女をもらってもらうのだって、躊躇しないかもしれない。

だけど、最高のキスの相手が社長じゃ、どうにもならない。

もう、二度とキスなんかしちゃいけない男だ。
え?なんでって?

なんでもへちまもないわい。

社長だもん。
私にとって、一番恋愛とは程遠い存在だもん。

相棒で、兄妹みたいなもんで、喧嘩仲間で。

エロエロラブラブな恋人同士になんかなりようもないじゃない。
そんなの求めてない。これからも一緒に穏便に会社を動かしていくんだから。

私は集中できなくなったドラマを一度止めた。コーヒーでも飲もうかな。

はあ、キス効果絶大。
私の人生、ひっくり返っちゃったみたいに混乱してる。
< 56 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop