強引社長の不器用な溺愛
私は横から口を挟む。


「植木くん、社長は雑で語彙が壊滅的に足りないので、こんな言い方になっていますが、植木くんの考える路線で合っていると言っています。あちらの担当も新人、おそらくは上からの指示を丸飲みで投げてきているのでしょう」


「篠井さん……」


植木くんが地獄に仏といった顔で、私を見つめる。


「安全策はあちらの指示通りのデザインをひとつ、植木くんの信念通りのデザインをひとつ、提示することです。どちらがいいかは大元のクライアントには一目瞭然でしょうし、新たな意見の擦り合わせもできます」


私の言葉に植木くんが頷き、今度は社長が口をへの字にした。


「植木ィ、返事は頷くんじゃなくて『ハイ』。あと篠井、誰が雑で語彙が足りないんだ?」


「この会社に八束社長以外いないでしょう、そんな人」


私の言葉に小さなオフィスがどっと沸いた。

社長ひとりが口をひん曲げて不服そうだけど。
うん、放っておこう。
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