強引社長の不器用な溺愛
「運動できないストレスを食欲に還元することにしたんだけど、朝メシに付き合え」


社長が同行を命令してくる。上着を脱がないのはそういうわけか。
私は眉間に皺を寄せた。


「私はもう食べたって答えましたよね」


「だから、“付き合え”」


社長は当然のように言う。やだってば。あー、面倒な男。


「コーヒーおごってやるから。食べたかったら、ケーキでもなんでも」


「食べませんよ、朝からケーキなんて」


実際は食べられますけどね。ヨユーで3つくらい。
本音は心の中だけで呟く。


「ほら、あそこのさ、新青梅沿いにできたコーヒー店。コーヒー頼むとトーストとかついてくる。なんだっけ?」


「そんなところまで行くんですか?車出さなきゃじゃないですか。嫌ですよ!」


「じゃあ、すぐそこのファストフードでいいから!」


「可もなく不可もなくなコーヒーは飲みたくないです」


結局折衷案で、近所のモーニングをやっている喫茶店に落ち着いた。
古いけれど、常連ばかりの空間で、社長は何度か打ち合わせで使ったことがあるとか。

私ってば、断るつもりが、結局、ノリと勢いで同行してしまった……。
< 68 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop