強引社長の不器用な溺愛
「え?でもうまいよ?篠井、食べたそうにしてるし」


「してない!子どもじゃないんだから!」


タメ口でキレてしまったのは、図星だったからだ。
確かにふかふかで美味しそうって思った。
だけど、バレたくないんだって、そういうの。いじきたなく見えるじゃない!

私の苛々を完全無視で、社長がホットケーキを一口分ナイフでカットする。フォークに刺して、私の顔の前へ。


「ほら、あーん」


「いりませんって」


「いーから、あーん。落ちるだろ、早く」


急かされて、困って、ええいままよ!と私は口を開けた。
ぱくっとホットケーキを食べると、社長がにっと笑った。


「うまい?」


「美味しいです」


モグモグと咀嚼しながら、手で口を押さえ答える。


「それはよかった」


社長は無邪気に笑ってるけど、恋愛経験が中学生くらいな私は、今あることを考えています。


間接キスだ!!


……って、私、痛々しいくらいコドモ!!


でも、考えてしまう。
社長の使ったフォークなら、間接キスになるじゃない。

待て待て、この前ディープキスしてんじゃん。そんなに騒ぐ必要ないっしょ。
そして、忘れるんでしょ?そのことは思い出すなって自己暗示してるでしょ?

心を全力でざわめかせたまま、コーヒーをすする私。
はあ、朝から無駄に疲れる。



< 71 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop