強引社長の不器用な溺愛
朝食を済ませ、社長と会社に向かって歩き出した。
すると、私たちの少し前を歩く会計の衿奈ちゃんの姿。駅からの出勤風景だ。


「あ、土屋だ」


社長が先に気づき口にすると、声がでかいもので衿奈ちゃんが振り向いた。


「社長、絹さん……、おはようございます」


衿奈ちゃんが鳩に豆鉄砲的な表情で私たちを見ている。

え、何その間。
なんか、微妙な沈黙が流れてるけど。


「朝からご一緒……。やっぱりおふたりはそうだったんですね!?」


衿奈ちゃんがキャーッと手袋の両手を頬に当てはしゃぎだす。どうした?若者のテンションがわからない。


「“そう”って何?」


「お付き合いされてたんですね、社長と絹さん。すみません、私、鈍いみたいで!全然気付きませんでした!」


衿奈ちゃんは頭を下げ、またしてもキャアキャア言い出す。

なんて誤解だ。
朝から一緒にいたら、そんな風に見えるなんて。

衿奈ちゃんの脳細胞のせいなのか、一般的にそうなのか、私にはわからない。
とにかく誤解を解こうと息を吸い込む。

すると、私が否定する前に、横で社長が言った。
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