強引社長の不器用な溺愛
「俺と篠井が?ないないない!」


社長はからっと笑って言いきった。

おおう、全否定。
いいけど。
私も否定するつもりだったし。


「え……そうなんですか?大丈夫ですよ、私、誰にも言いません」


「なんだその無用な気遣い。おまえ、壮大な勘違いしてるぞ。普通に考えて無いだろ。俺と篠井が恋仲なんて」


社長はげらげら笑いながら、馬鹿にしたように言う。


「あ……そっか。そうですよねー!やだな、私!早合点しちゃって」


一瞬固まっていた衿奈ちゃんも、緊張が解けたように笑いだした。

勘違いかぁ……いいですけどね。
なんとなく衿奈ちゃんと話す社長をちろんと見てしまう。

土屋衿奈25歳、もしかして好みだったりします?
私なんかと付き合ってるって誤解されたくないとか?

衿奈ちゃんも社長にはしょっちゅう手こずらされて、文句ぶうぶうな割に、なんだか楽しそうに話してるじゃないですか。
もしかして、ホッとした?私と社長が付き合ってなくて。

いかんいかん、私なんか邪推ムードだ。
よくないよ、こういう思考。

私は首をプルプル振って、気持ちを元に戻す努力をするのだった。



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