強引社長の不器用な溺愛
デスクにどかっと置いた鞄を手に踵を返そうとすると、ショルダーストラップがオフィスチェアの背もたれに引っかかる。
いつもは20代女子大好きブランドのトートなんだけど、今日に限って職場にひざ掛けを持ってきたせいで大きめリュックサックで来たんだった!

わー!
椅子が倒れる!

慌てて倒れる椅子をつかもうと、前かがみに腕を伸ばすけれど、案外鈍くさい質の私はオフィスチェアのキャスターにつま先を引っ掛けた。


「篠井っ!」


社長が駆け寄るけれど、私が椅子の横に無様に転倒するのは止められなかった。


「あたぁ……」


床はカーペット敷きとはいえ、たいしたクッションにもならない。
社長が私の横でカラカラキャスターを空転させている椅子を退かす。立膝になり私に手を差し伸べた。


「大丈夫か?どこぶつけた?」


「平気です」


強がってみるものの、スネの上部をぶつけたようだ。
これは青アザになる予感だ。


「いいから、手ェ貸せ」


社長に強引に手を取られる。ぐいっと引き寄せられ、視線をそらす。

ありがたいけど、何より恥ずかしい。

私、すんごいカッコ悪くコケたよね。
醜くも脚なんか見せてないよね。ううう。
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