強引社長の不器用な溺愛
社長は私を助け起こそうと、左手を私の腰に回した。

あ、社長の顔がすっごく近い。
まつげまでよく見える距離。この前は、まつげなんか見る余裕なかった。


「ほら、立て。そしたら、痛いところ見せてみろ」


社長がふっと笑った。
こいつ、困ったヤツだな。そんな微苦笑。


次の瞬間のことだった。


私は吸い込まれるように社長の唇に、自らのそれを重ねていた。


柔らかく、まるで触れ合うことが必然というほどに、すんなり合わさる私たちの唇。
社長が驚いていることが気配でわかる。
そして、社長の何百倍も私自身が驚いていた。

というか、驚天動地だ。
自分のやらかしていることに、まっっっったく身に覚えがない。現在進行形でまったく意味不明。

なんで?
どうして、私、社長にキスしてんの?

自分から、しぜーんに、ちゅーってやっとりますけど。

バカなのかぁぁぁ!

死ね、私の欲望!
死ねぇっ!


「篠井……」


唇がもたりと離れる。
社長が困惑気味に私の名を呼ぶ。

あああああ、やめて、やめて。
そのドン引き顔、やめて。

私もわかってる。
やらかし番長なのわかってる。

はい、私が勝手にキスしましたー。すみませーん。

だから、その目で私を追い詰めないで!
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