強引社長の不器用な溺愛
「どちらかが、じゃなくて、お互いに。ふたりで気持ちよくなるんです。キスってそういうものでしょう」


どこから出てきたのか、大人女子の仮面を上手に被った私は誘う声を出す。

社長が私の顎を捉える。
大きく口を開け、捕食するように口付けてきた。


「んっ………!」


息ができないほどの激しいキスは、何の前置きもなく始まった。

本当に性格が出る。社長のキスは自分勝手だ。
私の反応なんか見ずに、一気に私を追い込んでくる。

だけど、そんな獣のようなキスに、がんじがらめに囚われている私が確かにいるのだ。

必死に舌を伸ばし、彼の感じるポイントを探る私は、ねだっているようにしか見えないだろう。
両腕をきつく彼の首に回し、逃すまいとしがみつく。

社長の抱擁は私の欲望を完全に満たす、強くきついものだ。

このキスが欲しかった。

もう一度、なんとしてもしたかった。

私って、想像以上に下種かも。キス目当てで、信頼関係を築いてきた上司を襲うなんて。
最低かも。

そう唱えながら、キスをやめられない。

社長もまた、私に煽られるようにキスを深くする。
舌を深く潜り込ませ、私がくぐもった声を発するのを楽しみ、今度は柔らかくついばむように唇を挟む。
私が耐えきれなくなって、哀願するように舌を出すと、罠を張っていたかのごとく食らいついてくる。
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