強引社長の不器用な溺愛
「絹(きぬ)さん、ちょっといい?」


デスクの島は2列、左手から私に声をかけてきたのは沙都子(さとこ)さんだ。社歴4年のシングルマザーで主にウェブ広告のデザインを手がけてくれている。


「鮮々マルシェのネットショップの件なんだけど」


「安野産業からの仕事ですよね」


「うーん、もらった情報が圧倒的に足りないのよね。社長のパソコンにメール来てないかしら」


私はため息ひとつで、八束社長のパソコンを起動。メールボックスには、案の定、たまりにたまったメール。こんな感じでよく仕事を回せているもんだと、相変わらず妙に感心する。


「沙都子さん、ありましたー。今、転送しまーす」


「ありがと。ついでにこの案件、私がもらっちゃうけどいい?担当者とのやりとりは社長にCCつけるから」


沙都子さんにあげなきゃ、本件はつぶれる。
いっそ、CCもいらないくらいです。どんどんやっちゃってください。


「よろしくお願いします。万が一遅くなるようでしたら、娘さんのお迎えは私が行きますので」


「納期は明後日。保育延長ナシで、ギリいけるかな」

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