強引社長の不器用な溺愛
徐々に私の身体に彼の体重がかかってくるのを感じた。
そのまま、カーペットの床に倒れ込むのに時間はかからず、私は再び押し倒された格好で社長のキスを受けた。

前回とは違う。
押し倒され、すぐに気づいた。

私の髪をもてあそんでいた社長の手が、私の肩に移動した。
そして、首筋を長くて大きな指がさわさわとくすぐってくる。うなじや、耳まで触れてきて、その感触で私はびくんと身体を揺らした。

私の反応を見て、社長のキスはいっそう激しさを増す。
指が鎖骨周辺も這い回る。もう少し下に下れば、バストだ。


「んんっ……やっ……しゃちょぉ……」


キスの合間に非難とも嬌声ともとれる声を漏らすと、社長がわずかにキスを中断する。


「気持ちよくねーならやめる」


「いや……それ……は」


気持ちよくないわけがない。
私の真っ赤になったであろう顔から、社長は答えがわかってしまったはずだ。
了解したとでもいうようにキスを再開する。
左手はひじを床についた格好なので、私と社長の身体はものすごく密着している。右手が私の髪や首筋、頬なんかを触れては離れる。

焦らされてるみたい。
どうしよう、社長とこんなことをしてる。

絶対、恋愛対象としてあり得ない存在の八束東弥と、こんないやらしいことをしている。

駄目だとわかっている。
キスもエッチも、本当は好きな人とすべきだ。
そんなのわかってる。

だけど、このキスの引力に抗えない。
この年にして初めて知ってしまった喜びを、身体が貪欲に欲している。
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