強引社長の不器用な溺愛
沙都子さんがうまく話を交わし、土屋の方へ話が行く。

俺はというと、三人の中で唯一黙って微笑んでいるだけの篠井が話題の中心にならないかと、ソワソワしてるんだが。

しかし、土屋の駆け出したばかりの恋話が続き、一向に篠井に恋愛トークが振られない。

おい、土屋!篠井にも振ってやれ、先輩だろ!?


「絹さんはぁ……」


ようやく篠井に話が回った。
よし、こっちの準備はできてるぞ!来い彼氏情報!


「豚足ともつ鍋どっちがいいですか?」


なんてこった。土屋の話題はこれから行くであろう居酒屋に移っていた。

おまえなぁ!なんだ、その2択!
恋バナどこ行った!


「私は豚足でお肌プルプル路線」


篠井がパソコンをシャットダウンしつつフツーに答え、横ですでに立ち上がった沙都子さんが口を挟む。


「もつ鍋のオロチ屋、今年もコラーゲンたっぷり美肌鍋やるって書いてあったわよ」


「え?本当ですか?それなら、もつ鍋」


「はい、けってーい」


嬉しそうに言った土屋が携帯でクーポンを出して見せる。
ホントゆるいな、こいつら。もう終業後だし、社長の俺も似たようなことしてるんで許すけど。


「それじゃ、お先に失礼しまーす!」


オフィスに残る数人に土屋が声を張り上げ、横で沙都子さんが会釈する。

篠井が俺のところへやってきた。
これまたフツーの顔で。
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