強引社長の不器用な溺愛
仕事上、関わらないわけにはいかないから、会話もするし、業務は通常通りだ。

しかし、腹が見えない上っ面だけの笑顔を見せて、俺と距離を取っている。
おかげで、いつも成されていた軽口の喧嘩なんかもなくなり、空気がすこぶるよそよそしい。

さらに、徹底的に俺と二人になるのを避けているため、終業後はさっさと帰り、朝も俺とかち合おうものなら、オフィスを出て行ってしまう。

なんなんだよ、篠井絹。

月曜のキスが悪かったのはわかってる。

だけど、誘ってきたのはおまえだろ?

そう。あれほど誓ったのに、俺は再び篠井とキスしてしまったのだ。

月曜の夜、二人きりのオフィス。
コケた篠井を助けたらキスされた。

『キスくらいで驚かないでください』

余裕たっぷりに言われて、どこかで高揚した。
キスしてもいい。そう許可されたことがたまらなく嬉しかった。

二度目のキスも文句なしに気持ちよかった。
口腔のイイところを舌で刺激すると、篠井が『んっ』とわずかに喘ぐ。その声が初心で可愛いと思った。
慣れた様子で誘うくせに、キスには全然慣れてない。アンバランスで、もっと知りたくて、鳴かせたくて、夢中になった。

どうにか踏み止まれたのは、篠井が驚いたような顔をしたからだ。
ついその気になって、身体に触れてしまった。

篠井は短く声を上げ、困惑したような驚いたような顔をした。
そこで目覚めた。

やばすぎるだろ、俺!
危うく今度こそ抱くところだったじゃねーかっ!

< 87 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop