強引社長の不器用な溺愛
「社長」


振り向くとそこに篠井がいた。すっごく無愛想な顔をしている。
怖ぇーよ、おまえ。


「なに?」


「いえ、なんでも」


「なんだよ、言えって」


「何も聞いていません」


さては……、生駒とのやりとりが聞こえていたと見える。篠井の席が一番応接に近いもんな。

えー?だけど、そこで不機嫌になってると俺も勘違いするぞ。
もしや、嫉妬!?とか。

まあ、いいや。嫉妬のはずはないし、弁解しようものならただの自意識過剰野郎だ。
俺たちの背後から敬三さんが近づいてくる。


「東弥、このまま外で打ち合わせしよう」


「いいっすけど。篠井もですか?」


篠井も打ち合わせ同行ってことは、何度かあるけれど、来週の出張の件は別にいなくてもいい。


「絹にも頼みたいことがあるもんで。ほら、そこのおしゃれカフェでいいや。可愛くラテアートでも飲みながらやろう」


なんだ、敬三さん。普段なら打ち合わせは時間ギリギリ、タバコくさい喫茶店かラーメン屋かファミレスが打ち合わせポイントなのに。

なぜ、今日に限って1時間も早くやってきて、おしゃれカフェに誘うんだ?

理由はすぐにわかることとなる。




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