強引社長の不器用な溺愛
ガチのラテアートとオゴリのベリークランブルケーキ囲んで、敬三さんが真っ先に頭を下げた。


「すまん、東弥。来週の出張はおまえに任せたい!」


藪から棒の謝罪に俺も篠井もポカン顔だ。

来週は新潟の有名なキノコファーム・大沢キノコ農園株式会社へ行くことになっている。

全国展開の大会社なのだが、この度キノコの有効成分をサプリメントとして大々的に発売することになり、以前から広告分野も拡販分野も手伝ってきた安野産業にプロモーションが依頼されたのだ。
紙媒体もウェブ媒体もデザインの下請けは、うちってわけ。

なので、敬三さんと俺が現地に挨拶方々行くって話になってたんすけどー。


「出張自体に行かないってことですか?」


一応聞いてみると、敬三さんがすまなさそうに、且つはっきりと言う。


「行くには行くし、挨拶はする。でも、午前中には向こうを出たい」


どういうことだろう。それじゃあとんぼ返りもいいところだ。
何か重要な仕事を残してるのか?


「随分急な戻りですね。何かあるんですか?」


篠井が横で口を開く。篠井もまだ話を聞いていない様子だ。
しかし、敬三さんの口からは思わぬ言葉が返ってきた。


「唯人(ゆいと)の保育園でクリスマス会があるんだ」


「は?」


俺と篠井の声がかぶった。
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