強引社長の不器用な溺愛
唯人っていうのは、敬三さんのご長男。昨年の秋生まれで、先日1歳を迎えたばかり。

40代半ばでパパになった敬三さんは、それはもう目の中に入れても痛くないほど可愛がりまくっていて、奥さんがちょっと引くぐらい溺愛している。


「保育園のクリスマス会とキノコファーム出張にどんな関係が……」


篠井が怪訝な顔で問うと、敬三さんが渋い顔で呟いた。


「サンタをやるんだ」


サンタ……。保育園で敬三さんがサンタ。
なんスか、その呪文。


「もしや、サンタ役を引き受けたから、出張を早帰りしたいと……?」


篠井が遠慮なく問い詰める。
敬三さんは申し訳ないと再び頭を下げた。


「すまん!本当はグループ園の男の先生がやるはずだったんだが、脚を折っちゃったそうで。園のパパの中で一番年上で、お迎え回数が少ないから面割れしてない俺に白羽の矢が立ったんだよ」


「そんなこと言って!敬三さん、唯人を喜ばせたいだけでしょう!」


篠井が血縁なのをいいことに、10歳以上年上の従兄をなじる。
敬三さんも素直なものだから、ああと頭を抱えて告白する。


「それも否定できないんだ!初めての保育園でのクリスマス会だろ?サンタを見たとき、唯人がどんな顔をするのか!?俺はそれが見たいんだよ」


「どうせ、泣きますよ!1歳児にはサンタもなまはげも一緒にしか見えませんよ!」


「泣き顔だっていい!見たい!」
< 97 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop