百瀬さんと堀先輩の恋愛事情
その1
百瀬さんの決意
今日こそ好きだと言ってやる。
そう決意を胸に放課後の誰も居なくなった教室でひとり、あたしは息を吸って吐いての繰り返す。
夕暮れ時の教室は茜色に強く染まり、廊下は部活動中の生徒がランニングをする音が聞こえる。玄関へ足を向ければ体育館からボールの跳ねる音。
今日の天気は雲一つない快晴だったなあ、なんて空を見上げながら信号待ちをして歩道の隅に咲いているチューリップをぼんやりと眺める。
途中で近所の中学生とすれ違い、ほんの数か月前は自分もあの制服を着て中学生やっていたんだと思うと、なんだか不思議な気分になった。
憧れの先輩と同じ高校に入学して早1か月。先輩と同じ学校の制服を身にまとっているんだと再確認し、口元が緩む。
よし、先輩に告白するんだ!!頑張るんだ、気合だぞ花!!パチパチと冷えた手で熱い頬を叩く。ただいま、と靴を脱いでベッドへダイビング。
――好きな人に告白すると、気合を入れてたどり着いたのは、
………自分の部屋でした。