百瀬さんと堀先輩の恋愛事情
「くそくそくそ」
「ㇷ゚っ…先輩どんまいです」
「ちくしょう!!!」
あたしが今日撮った写真を手に入れることが出来なかった先輩は、試合で負けた時くらいに悔しがっていた。なんとも、まあ、哀れなこと。
それを面白半分馬鹿にするのだけれど、後で写真はあげるつもりだ。
2人を見失って早数十分。ずっと人込みの中にいたから気付かなかったけれど。少しお祭りの喧騒から外れると、一本少しくらい道に出てきた。
お祭り会場のこの公園は、川が通っていて明るい時間帯はボートに乗ることが出来る。梅雨の時期は紫陽花がとても色鮮やかに咲くし、秋は紅葉がとても綺麗だ。
水面に映りこむ屋台の明かりは何だか幻想的で。わざわざお金を払って高い建物に登ったりしなくても、こんな素敵な景色が見られるだなんて贅沢だと思う。
こんな時間がずっと続けばいいのに、なんて柄にもない言葉が脳裏に浮かんだ。と、そこで。
「そうだ、花ちゃん」
「なんですか?」
「これ、花ちゃんと合流する前にくじ引きでとった猫のストラップ」
「へ?」
「可愛いでしょ、これ…花ちゃんにあげようと思って」
「いいんですか?」
「うん。花ちゃんこういうの好きでしょ?」
「……ありがとうございます」
「えへへーどういたしまして」
「後で写真送りますね」
「やったー」
こんな不意打ちに贈り物だなんて、反則だ。
赤く染まる頬に、あたしは口を尖らせた。