蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「本当は、俺の家に連れ帰ろうと思ったんだ」
「なっ」

三条先生はしゃがみ込み、雪愛に、視線を合わせた。雪愛は、精一杯体を逸らせた。

「…結構傷つくな、そんなことされたら」
「…近寄らないで」

「今日の所は帰るよ・・・雪愛ちゃんに、考える時間をあげる」
「考える時間」

「・・・そう。…俺を取るか、蘇芳先生を取るか」
「・・・・」

「ゆっくり考えて」
「・・・や!・・・ん~!!」

「・・・ッ!」

無理やり強引に雪愛の唇を奪った三条先生。雪愛が逃げられないのを良い事に・・・

雪愛は精一杯抵抗した。…三条先生の唇をかんで。

…パッと離れた三条先生の唇には、血が滲んでいた。

「…三条先生なんて、大っ嫌い」
「・・・」

顔を覆い、泣き出した雪愛を見つめていた三条先生だったが、もう何も言う事なく、部屋を出ていった。

…いつまで、泣いていたんだろうか。

雪愛は泣き疲れ、いつの間にかソファーで眠っていた。

「・・・ん」

…温かいぬくもりに気付いた雪愛は、そっと目を開けた。

・・・雪愛をしっかりと抱きしめていたのは。

「…蘇芳、先生」
「…起きたか?…足は?痛くないか?」

その優しい声に、雪愛は、ポロポロと涙を流した。蘇芳先生はギョッとして雪愛を抱きしめた。

「痛いのか?痛み止めは?」

蘇芳先生はオロオロとしていた。
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