蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
・・・雪愛は思った。この笑顔が、後何回見られるんだろうか?

「…ほら、雪愛、おいで」

雪愛の隣に座った蘇芳先生が両手を広げる。

「…なんか私、ペットみたいですね」

そう言って苦笑いする。

「雪愛は俺のペットか・・・悪くない」

そう言って笑う蘇芳先生の胸を軽く叩く雪愛。でもその手を引き寄せられ、蘇芳先生の腕の中にすっぽりと包みこまれた。


…後何回、抱きしめてもらえる?

「…蘇芳先生…キス、して」
「…やけに素直だな」

本当は可愛いと思ってるくせに、そんな事を言う蘇芳先生。

「…ダメ?」

上目遣いに言う雪愛にドキッと胸が高鳴る蘇芳先生。

「…いい加減、下の名前で、呼んでくれたら」
「・・・」

「何時まで、蘇芳先生だって呼ぶつもりだ?」
「…恥ずかしい」

顔を赤くした雪愛。・・・あ~、何でこんなに可愛いんだろう。と、蘇芳先生は思う。

「秀明…そう言ってくれないと、出来ないな?」

そう言う蘇芳先生に、観念したように雪愛は耳元で囁いた。


「秀明・・・キス、して」
「…可愛くてしょうがないな…雪愛」

そして、甘く優しいキスが降ってくる。

…後何回キスできる?

…その後は、蕩けるように、雪愛を抱く蘇芳先生。

その深く愛情こもった愛撫に…優しい愛の囁きに、雪愛は、蘇芳先生にしっかりと抱きついた。




…後何回、抱いてくれる?




涙を流す雪愛を、蘇芳先生は深く深く。愛した。


いずれ訪れる別れも知らないまま・・・・。
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