蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…同時刻。蘇芳先生は、院長室に呼ばれていた。

「…院長が、私を呼ぶなんて珍しいこともあるんですね」

蘇芳先生の言葉に、院長は笑う。

「…本当だな。蘇芳先生には、いつも助けられてるから、たまには食事にでもと思ってはいたんだが、君はとても忙しい」

「…何か、おっしゃりたいことがあるから、呼び出したんですよね?私が回りくどいことが嫌いはのは院長が一番ご存知のはずてす」

蘇芳先生の言葉に、院長は肩をすくめた。

「…そうだな。君はそういう男だった。それでは、単刀直入に言わせてもらう」

そう言うと、真っ直ぐに蘇芳先生を見据えた院長は、真剣な表情で爆弾を投下した。

「…うちで働いてる島崎雪愛という看護師と、付き合ってるな?その子と別れなさい」

…蘇芳先生は、院長を睨んだ。

「…君は、啓介と島崎さんの噂は知ってると思うが」

「…そんなの、ただの噂ですよね。現に、彼女は、私の大事な彼女です。結婚も考えてる人です。それがなぜ、院長に別れろと言われなければいけないのか、さっぱりわかりませんが?」

「…啓介の為に、身を引いてくれ。…それに、君は君で、薫子に大そう好かれているらしいじゃないか。島崎さんではなく、薫子と結婚すればいい…その方が、君の将来は安泰だと思わんか?」
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