蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…雪愛?」
「…蘇芳先生」

「…どうした?」
「…別れましょう」

突然の言葉に、蘇芳先生の頭の中は、真っ白になった。…院長に言われたにしろ、雪愛はずっと、自分の事を好きでいてくれると思ってた。

「…別れない。言っただろ?俺は、雪愛を愛してるっ「愛してない‼︎」

「雪…愛」

「もう、私は蘇芳先生の事、愛してない…私は…私は、三条先生と結婚するの。…私は幸せになる。三条先生はお金持ちだし、私の願いは何だって叶えてくれる」

嘘八百並べ立て、雪愛は蘇芳先生を突き放した。泣いたらダメ…泣いたら決心が揺らぐ…蘇芳先生が困ってしまう。彼の未来を潰せない。

「…雪愛…それが君の本心か?」
「…当たり前じゃないですか?…院長夫人なんて、憧れ…ですよ」

…蘇芳先生…蘇芳先生…こんなにも貴方を愛してる。

だから、この気持ちを受け入れて。

言葉とは裏腹な雪愛の懇願すような眼差し。

「…蘇芳先生、私と別れて下さい」
「…」

…なんの答えもくれないまま、蘇芳先生はその場を離れた。
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