蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…でも、雪愛は頷けなくて、同意出来なくて、ただ曖昧に微笑む事しか出来なかった。

…午後の診察が終わった。

雪愛は、今日の片付けと明日の準備を同時進行しながら、忙しそうに働く。

三条先生も、電子カルテを見ながら、今後の事を考える。

でも、側で、ウロウロと忙しそうに働く雪愛の姿を、チラチラと目で追ってしまう。

…真剣な顔をしたり、ちょっと間違えて、焦った顔をしてみたり、事務の人と楽しそうに話している。

コロコロと表情の変わる雪愛を見るのが本当に楽しくて、幸せな気持ちになる。

…ずっと、その表情を見ていたいと思う。

でも、それと同時に、今の自分は、雪愛の笑顔を奪っていると言う罪悪感もあった。

…心からの笑顔なんて、雪愛は、三条先生には見せる事は無いんだろうと思うと苦しかった。
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