蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…どうしたの雪愛?お母さんより元気がないみたいだけど」

実家に帰った雪愛にそう言ったのは、雪愛の母。

「…そんな事ないよ」

そう言っておどけてみせる雪愛。

そんな雪愛を見て、母は溜息をついた。

「…無理してても、顔に出てるからバレバレよ」
「…ぅ」

どんなに隠そうとしても、母にはバレバレだと思うと、雪愛は観念したように苦笑した。

「…で?何があったの?」
「…」

俯いた雪愛を見て、母は優しく微笑んだ。

「…彼しとうまくいってないの?」
「…なっ」

雪愛の驚きように、母笑った。

「…ホント、分かりやすい子」
「…だって」

「…喧嘩でもしたの?」
「…喧嘩なら仲直りできる」

「…別れたの?」
「…う、ん」

「…どうして?」
「…好きだから…好きで好きで、大好きだから」

言葉に出してしまった雪愛は、泣き出してしまった。そんな雪愛を、母は優しく抱き締めた。

「…好きなのに別れるなんて。…おバカな子ね。…そんなに好きなら、何があっても側にいれば良かったのに」

「…迷惑かけたく、なく、て」

雪愛の振り絞ったその声に、並々ならぬ決意を感じた母は、もう何も言わず、ただ黙って、抱き締めた。


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