蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…今夜は泊まっていきなさい。今日は久しぶりに一緒に寝ましょう」

突然の提案に、一瞬雪愛は驚いたが、それが母なりの優しさなんだと思うと嬉しくて、小さく頷いた。

…もう20歳になったというのに、母に甘えるのはどうかと思ったが、今は、誰かに側にいて欲しかった。

一緒にご飯を食べて、狭いお風呂に二人で入って、子供に戻ったみたいに、雪愛は母に甘えた。

そんな雪愛を、微笑ましく思いながら、母は、雪愛をとことん甘やかした。

シングルの布団に二人で入って、なんでもない話をして、いつの間にか、雪愛は眠りについていた。母は、眠る雪愛の頭を優しく撫でた。

「…蘇芳、先生」
「…」

「…会いたい」
「…」

…雪愛は一体どんな夢を見ているんだろうか?寝言で何度も蘇芳先生の名前が出ていた。

母は、雪愛を抱きしめると、目を瞑る。

「…まだまだ、お母さん、死ねないわね」

…その声は、眠る雪愛には届かない。
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