蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…次の日の朝。今日も、雪愛は出勤だった。

欠伸をしながら台所に行くと、先に起きた母が朝食を用意していた。

「…おはよう、お母さん」
「おはよう、雪愛…そうだ、今日は、お母さん特製のお弁当作ってるからね。持って行って食べて」

そう言って、満面の笑みを浮かべた母を見て、雪愛も嬉しそうに頷いた…でも、その笑顔は、一瞬で消える。

「…お母さん」
「…なぁに?」

「…顔色はかなり悪いみたいだけど、大丈夫?」

心配そうな顔で雪愛は母に問いかけた。

「…大丈夫よ。今朝も、気分良く起きたもの」

そう言って微笑む母だが、誰が見てもわかるほど、顔色は青白かった。

「…無理はしないでね。私の家族はお母さんだけなのよ?ねぇ、本当に、1度、うちの病院で検査を受けてよ」

「…もぅ、心配性ね、この子は。本当に大丈夫だって言ってるでしょう?近くの病院には時々行って、診てもらってるし、心配しないでね」

…雪愛は看護師だ。それなりに病気の知識はある。

「…お母さんに何かあったらどうするの‼︎」

雪愛の言葉に、母は微笑み、雪愛を抱き締めた。

「心配してくれて、ありがとう。でも、本当に大丈夫だから。何かあったら、直ぐに、貴女の病院に行くから」

…ね?という母の言葉に、雪愛は困ったような顔で頷いた。
< 124 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop