蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…今まで悪かったって言ったの」
「…あ、え、いえ」

困惑気味にそう言う雪愛。

「全ての罪滅ぼしは無理だけど、貴女にどうしても教えておきたい事があるの」

「…」

「…蘇芳先生が、勉強で出張だって言ってるでしょ?あれね、嘘よ」

薫子先生の言葉に、雪愛は目を見開いた。

「…その話が嘘じゃないんですか?」

そう言って、薫子先生の顔を見据えた。

「…本当よ。嘘じゃない。…院長が、…うちの父が、蘇芳先生をこの病院から追い出したのよ」

「…院長が?どうして?」
「…赤の他人より、血を分けた息子の方が大事なのよ。親バカ…いや、バカ親よね。そんな事のために、うちに大事な外科医を追い出したんだから」

真実を知って、雪愛はワナワナと震えた。

「…三条先生は、その事、知ってるんですか?」
「もちろんよ。聞いてみたらいいわ、啓介に」

薫子先生の言葉に、雪愛は踵を返し、三条先生のもとに駆け出した。

勢い良く開いた診察室のドア。三条先生は驚きの眼差しで、入ってきた雪愛を見た


「…三条先生、聞きたい事があります」

雪愛に促されるまま、2人は屋上に向かった。
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